歯科診療
●<歯科診察 初診予約を希望させる方へ>
現在、歯科診察予約(15時~16時)が大変取りにくくなっております。
予約数に限りがあるため、特に土日の予約は1~2か月以上先となりますのでご了承下さい。
当院では、歯科・口腔内診療に力を入れています。
犬では3歳以上で約8割に口腔内に何らかのトラブルを抱えていると言われています。
猫では高齢になるにつれて口内炎により食事がとれない場合が多々あります。
これらの口腔内疾患の治療には全身麻酔での処置が基本となり、他の外科手術と同様、安全に麻酔を行うために術前検査が重要となります。
口腔内疾患に関しては、その症状にあった治療をご提示いたします。
また、セカンドオピニオンとして、歯に関する様々な相談も承ります。
詳しくは「歯科口腔外来を受診される方へ」
【犬の歯周病】
【猫の口内炎】
チワワ、トイプードル、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなどの小型犬に多く発生する歯科疾患です。
永久歯の萌出(乳歯と永久歯の生え変わり)は通常4~7ヶ月齢で行われますが、1歳を過ぎても乳歯が残っている場合には抜歯の必要があります。
残存乳歯は隣り合う永久歯との隙間から歯肉炎を起こし、歯周病の原因となるだけでなく、咬合異常を起こし食べられなくなる場合もあります。
子犬を迎えたら成長期に一度、歯科検診を受けることをお勧めします。
【乳歯残存した1歳のチワワの症例】
犬歯と切歯に残存乳歯が多数あります
【歯列異常の9ヶ月齢のチワワの症例】
下顎の歯が上顎の歯肉に当たって咀嚼困難な状態
中高齢の猫に多く見られるのが歯肉口内炎です。
原因は、歯周病やFeLV(猫白血病)、FIV(猫免疫不全)など感染症による場合、猫歯頸部吸収病巣(FORL)といった猫特有の疾患による場合、免疫機能の低下などと様々です。
症状はよだれや口臭から始まり、進行すると食べられない、水も飲めないくらい強い痛みを伴います。
治療は痛みを取り除くために抜歯などの口腔外科を行うことが優先されますが、免疫機能を上げる内科療法も併用する場合があります。
【猫の歯肉口内炎】
【口狭炎】
硬い物を咬んでいて、歯の表面である歯冠部が折れてしまうことを破折といいます。
犬では咬合圧がかかる上顎第4前臼歯がはがれるように折れることが多く、平板破折といいます。
歯髄(血液が通っている歯の中心部、一般的に神経と言う部分)が露出し、放置してしまうと細菌感染から歯髄炎となり、歯を保存することが難しくなります。
破折してしまった歯は受傷後早期であれば、コンポジットレジンという特殊は樹脂によって元の歯に近い状態に修復することができます。
【上顎第4前臼歯 破折】
【歯冠修復治療後】
ウサギ・チンチラ・モルモットなどでよく見られる歯科疾患が不正咬合です。
特にウサギの歯は一生伸び続ける常生歯といい、干し草や牧草などで歯が常時削れていないと咬合面の形態が変化し、咀嚼能力が低下するため食欲不振や体重減少を招きます。
不正咬合は臼歯・切歯ともに起こり、治療は全身麻酔下で過長歯を高速タービンやマイクロエンジンで切削します。
【切歯過長:下顎切歯の伸長】
【臼歯過長による口腔粘膜からの出血】
診察から手術の流れをご案内します。
○歯科初診問診票ダウンロードはこちらから(PDF104KB)はじめに診察を受けて下さい。お口の検査を行い、同時に既往歴などの問診を行います。
(歯垢・歯石の沈着、口臭の有無、歯肉の状態や喉の奥の状態などを調べます)
歯科問診票をご記入のうえ来院されますと診察がよりスムーズとなりますのでご協力下さい。
*歯科手術が必要な場合は次のステップへ!
(*注意 診察当日に手術を行うことはできません)
歯科手術を行うためには全身麻酔が不可欠です、無麻酔で治療を行うことは動物も術者も負担がかかるため望ましくありません。
全身麻酔をかけることが可能かどうか検査を行います。
血液検査、X線検査、心電図検査等で基礎疾患があるか否かが分かります。
(簡単な健康診断と同じです。年齢によって術前検査の内容が異なります。)
* 検査に問題がなければ次のステップへ!
(状況によって術前検査と歯科手術を1日で行うことも可能です)
* 術前検査で異常が認められたら基礎疾患の治療を優先し、歯科治療を延期する場合があります。
手術は完全予約制です。
歯科治療はほとんどの場合日帰り治療ですが、状態によっては入院になる場合もあります。
全身麻酔は一般的に吸入麻酔という方法で行い、動物種によって鎮痛薬や麻酔薬が異なる場合もあります。
退院時、お薬の有無やご飯の与え方、注意事項などをご説明します。
*歯周病など口腔外科治療を必要とする場合、食餌を変更することがあります。
【予防歯科処置】
【予防歯科処置】
【歯磨き:お一人で行う場合】
手術約1週間後、再診においで頂きます。
お口の検査をした後、歯磨きのコツやホームケアの仕方などをお教えします。
定期的な歯科・口腔内検診は3ヶ月に一度くらい行うと良いでしょう。
歯周病は歯肉や歯槽骨といった歯周組織に発生する細菌感染症で、細菌により歯槽骨や顎骨が破壊されて歯を固定する力が弱くなり、歯が脱落してしまう病気です。3歳以上の犬の約8割が歯周病の予備群といわれるほど、小型犬での歯周病が多く発生しています。
歯周病を放置することで歯が脱落してしまうだけでなく、歯周病菌が全身を巡り心臓や腎臓といった他の臓器に病気を起こす可能性があることが分かってきました。
歯周病の早期で比較的軽い場合であれば、歯垢・歯石除去やルートプレーニング(根面滑沢化)により歯を清潔に保つ治療で治すことができます。
歯周組織の炎症がひどい場合は、歯周組織の治癒を促すために化膿・炎症組織を取り除くための歯周外科治療が必要です。
しかし重度の歯周病の場合、歯周外科治療を行っても破壊された歯周組織の再生は行われない場合が多いため、抜歯せざるを得ない状況になります。
【EMP治療対象の症例写真】
歯周病によって破壊されてしまった歯槽骨などをEMP(エナメルマトリックス蛋白)という歯周組織再生用材料(製品名:エムドゲインゲル)を用いて再生を促す治療法です。
歯周病における最新の治療法として注目されており、人では約10年前から先進医療として行われていますが、獣医歯科ではまだEMP療法を行える病院は限られています。
当院では、歯周病の程度や動物の健康状態などによってEMP療法が行えるかどうかを飼い主様とよく相談してから治療を進めていきます。重度の歯周病であっても、少しでも自分の歯を残してあげたい、という飼い主様のご希望に沿える治療法のひとつです。
【エムドゲインゲル】
エムドゲインゲルは、スウェーデンのビオラ社で開発された歯周組織再生材料です。エムドゲインゲルの主成分(エナメルマトリックス蛋白)は若齢期に歯が生え始める際に重要な働きをする蛋白の一種です。
エムドゲインゲルの使用により100%正常な歯周組織の再生が期待できるものではありませんが、犬猫での治療成績も良くなってきています。
EMP治療症例(歯科X線画像で顕著な歯槽骨再生が認められる)
【手術前の歯科X線検査】
【手術後4ヶ月の歯科X線検査】
A1:全身麻酔下での治療となります。歯石除去などの予防歯科処置と同様に日帰り治療で行う場合が多いです。
A2:症状、基礎疾患の有無などにもよりますが、EMP治療は通常、診察、手術、術後の再診等を含め最低4~5回の通院の必要があります。
A3:人の場合、機能的な歯周組織を取り戻すまで数ヶ月から1年程度かかります。
犬の場合、歯周病の程度によっても違いますが、最低4ヶ月から6ヶ月程度で再生が認められます。
A4:いいえ。歯自体が再生するわけではありません。歯の根元を覆っているセメント質やそれを支える歯槽骨などの歯の土台となる組織の再生が期待できます。
A5:エムドゲインゲルは幼若ブタの歯胚から抽出精製された蛋白質です。人では世界約40カ国で使用されていますが、重篤な副作用の報告はありません。
A6:予約制です。外来診察や相談等も原則として予約をいれて頂いております。また、受診の際は歯科初診問診票をダウンロードしてご利用下さい。治療費は動物の大きさや歯周病の程度により異なりますので、担当医にご確認下さい。